DJ Bar Future Flight の4周年記念CD。DJ Bar Future Flight(東京・国分寺)の開店4周年のお祝いとして、お店の常連さんたちを中心に、店舗内に鏡がプレゼントされました。本パッケージデザインは、そのお返しとして Future Flight 側から配布された記念品CDのCDジャケットおよび、CDレーベルのデザインです。本CDは非売品であり、入手できるのは、開店4周年のお祝いに対して出資した Bar Future Flight のお客さんのみ。鏡の贈呈に対するお返しという意味合いから、本デザインは、ジャケット面/レーベル面双方において「鏡」を中心コンセプトとしたデザインが行われています。
アナログレコードを意識した紙ジャケ仕様
ジャケットはいわゆる「紙ジャケ」仕様。DJ バーということもあり、Bar Future Flight には数千枚のレコードがストックしてあります。今回配布されるのはCDではありますが、DJという職業を考えた時に、やはりイメージしやすいのはアナログレコード。市販の多くのCDのように無機質で壊れやすいプラスチックのケースに入れて包装を行うのではなく、紙の温かさと、レコードの懐かしさをそのままCDサイズに縮小するために紙ジャケ仕様になっています。また、ジャケット面の制作は印刷からカッティングまで全て手作業で実施され、まさに「アナログ」な手法で制作が行われています。記念品CDという、制作枚数が数十枚に限定されているデザイン案件だったからこそ実現した制作方法です。
アナログレコードといえば、「帯」
アナログレコードのイメージを徹底的に踏襲するため、帯の制作も実施。同店(Bar Future Flight)の店名をそのまま日本語に直すことにより、70年代〜80年代のアナログレコードの帯にありがちなちょっとだけ甘酸っぱい感じの雰囲気を出すことに成功。帯はもちろん取り外し可能。これも手作業で一枚一枚全てカティングとのり付けが行われています。
また、レコード店でレコードを購入する際についてくる保護のためのビニール袋も、CDサイズで実現。市販の紙ジャケCD違い、保護ビニールの糊付がされていません。これもアナログレコードの保護ビニールのイメージを踏襲して行われています。同店のマスターから1枚1枚手渡しで配布がなされる記念品CDだからこそ、市販CDのように盗難を防止するための「保護」が不必要だったという事情が大きくプラスに働きました。また、基本が「バー」で店内で頻繁に水気が取り扱われることを想定して、せっかくの「紙ジャケ」を濡らさないための配慮でもあります。
中身もしっかり「アナログレコード」
CDのレーベル面のデザインもアナログレコードを視覚的に意識。「小さなアナログレコードのジャケットから、小さなアナログレコードが出てくる」という喜びを実現させました。盤面の黒い部分は、ただ単に黒で塗りつぶしてイメージとしての「アナログレコード」にするのではなく、大きさの異なる数百本の同心円でアナログレコードの「溝」を表現。本物のアナログレコードに近い質感を出してあります(>>参考画像)。CDは2枚組ですが、「鏡」というコンセプトを踏襲し、2枚ともデザインは同一。色彩のみで対比を表現しました。夜のお店であるバーという業態を考えて、三日月と夜をイメージしたデザインになっています。
「鏡」を意識した構成
本CDは鏡をプレゼントされたことに対する、お返しの記念品CD。よって、ジャケット表面/裏面それぞれのの左半分にプレゼントされた鏡が写り込むように、Bar Future Flight の店内で写真撮影を行いました。同店でのイベント時(ダンスパーティーなど)に使用するライトを使用し、色彩に溢れている店内の一瞬を写真で切り出すことに成功しました。暗い店内で敢えて撮影用の照明器具を使用せずに撮影することによって、カメラのシャッタースピードが落ち、本来は順番に移り変わってしまう複数の色のパターンを一つの画面として同時に取り込むことが可能になりました。
静と動(表面/裏面)
ジャケット表面でライトを使用して色彩と躍動感に溢れたイメージを描写したのに対して、ジャケット裏面では、マスターとお客さんが静かに酒を飲んでいる姿が写し出されています。これは、本CDの「鏡」というコンセプトを意識し、「表面=動」/「裏面=静」の対比を表現したものです。裏面には、レコードジャケットの多くがそうであるように、リリース年度と同店の住所、Made in Japan、及びデザインを行った本サイトのサイト名を表記。なお、本サイトでの掲載画像では、ジャケット裏面の収録曲の曲名とミュージシャン名は "tune トラック番号/musician トラック番号" のように表記を行ってあります。実際には収録された曲名とミュージシャン名に置き換えられて配布されました。
帯の作り込み
帯の上部に、製品番号に模して Bar Future Flight の4周年記念イベントが実施された日付、つまりは鏡が同店にプレゼントされた日付を数字で表記しました(20090404)。また、横にはよくみかける「STEREO」の表記も行いました。帯裏面には、同店より過去に配布されたCDジャケットの画像を、時系列を追って掲載。こちらは、敢えてモノクロ印刷を行い、レコードジャケットの「裏面」の雰囲気を再現しています。帯は全てジャケットとは別に印刷され、手作業でのカッティング/糊付がされているので、取り外しが可能。なお、デザインを担当した本サイトのサイト名がジャケット裏面に表記されているが、帯で隠れる位置に配置し、あまり目立たないようにしてあります。
「鏡」のコンセプトを踏襲
以上、今回のデザインは、「アナログレコード」「鏡」というコンセプトができるだけ全体的に行き渡るようにデザイン上の配慮を行いながらデザインしました。また、これらの素材を全てひとつひとつ丁寧に手作業でひとつの「小さなアナログレコード」として市販品のようなクオリティを出せるように組み上げていくのには、かなり神経を使いました。いままでのデザインはデータでの受け渡しが多く、印刷作業に携わらないことが殆どでしたが、最初から最後までの行程のほぼ全てを自分自身で行った良い経験となりました。